映像の伝送は有線接続が一番良い。
だが有線接続と比較してて低遅延ならワイヤレスに切り替えたい。
『低遅延かつ安定性が「超」高い映像のワイヤレス伝送機が欲しい』という願望を常々抱いていた。
今まではHollyland Mars300 Proを使用していたが信頼性に欠けていた。
イベント生中継の本線でも使えるレベルで、尚且つSDI有線接続のカメラと混ぜても問題ないワイヤレス伝送機を求めていた。
発売は2024年と少し前になるがAccsoonから発売されているCineView Master 4Kを購入したのでレビューしていく。
他のレビュワーは「何m離れても映像は届いた」という伝送距離に関する言及やカメラのすぐ横で「ディレイは2フレームくらい」とか。
「遠く離れていても有線接続と比較して遅延が大きくならないのか?」という内容や「バッテリー持続時間はどれくらいか?」というレビューが全く見つからない。
そんなレビューでは実務に導入するのはハードルがあるだろ。
僕が常々思っていた疑問を誰もレビューで解消してくれないので、実際に購入して自分で試してみた。
今回は95m地点においてSDI有線接続と無線映像送信を比較して遅延や画質の劣化などがどの程度起きるのか?を検証した。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
目次
長尺が必要な現場ほど無線化したい
長いSDIケーブルが必要な現場ほどワイヤレスにしたい。
なぜなら輸送コストがデカくなるからだ。
総合格闘技の中継生配信業務が主となるのだが、途中で映像が途切れるのは許されない。
つまりケーブルは絶対にバックアップが必要になる。
会場次第だが、1台は50mでも概ね問題ない。
しかし他に2台ほど100mのSDIケーブルで接続する必要があるカメラがある。
3G-SDIを安定して100m伝送しようと思うと5Cのケーブルを用意する必要がある。
5C 100mとなると重量は7kg近くになる。
そして万が一の為にバックアップを用意するとなると、
- 5C SDI 100m x 4本
- 2.5C SDI 50m x 2本
カメラへの接続だけで上記の本数が必要になる。
5C 100mのSDIケーブルは1本約7kgなので、合計で28kgとなる。
地方興行では予め配送手配をしておく必要があるのだが、ヤマト運輸では1つの荷物あたり30kg以下である必要がある。
つまり100mのSDIを4本入れるだけで他に何も入れられなくなってしまう。
むしろ入れる箱の重さを考えると4本すら入れられない可能性すらある。
もしCeneView Master 4Kで1台をカバーすることが出来れば、最悪バックアップの1本だけに省略出来る。
しかし離れれば離れるほど遅延が大きくなるなら有線接続で長尺のSDIケーブルを使わざるを得ない。
ワイヤレス伝送機がその現場で使えるかは賭けでしかない
電波で映像を送受信する関係上、周辺環境の影響をかなり強く受ける。
そしてそれは、現場Aで問題無かったから現場Bでも問題無いかと言うとそんなことは無い。
もっと言うと、今日の現場Aでは問題なかった。
けれど、同じ現場Aでも翌日には問題が出る場合だってある。
つまり当日ワイヤレス伝送機がちゃんと使えるかは賭けでしかない。
色んな干渉を受ける電波だからこそ機器側で色んな対策を練って欲しいし、ユーザーが安心して使える状態にして欲しい。
その点Accsoon CineView Master 4Kは2.4GHz帯,5GHz帯,6GHz帯のトライバンドで適宜最適なバンドを使用してくれるので、現状最もワイヤレス伝送が安定している映像伝送機器だろう。
Mars 300が不安定過ぎた
今までMars 300を使用していた。2020頃発売で古いとはいえHollyland Mars 300は映像の伝送が不安定過ぎた。
2025年5月のとある東京 神田でのセミナー撮影時、セミナー講師のスライドPCをHollyland Mars 300に接続し会場後方に組んだ配信基地まで飛ばし収録した。
直線距離にしたら13m程度だ。大して離れてもいないのに全く映像が安定しなかった。
同時に配信もあったが、幸いスライドを多用するタイプの講師ではなかったので、ほぼカメラ画だけ使う形となり最悪の時代は免れることができた。
とはいえアーカイブ作成時に映像が安定していたスライドをフリーズさせて、映像が乱れたところを消す作業が発生した。
たった10数メートルの送信なのに安定しなさすぎて本当に困った。
しかもその1ヶ月前の2025年4月には同じ神田(別会場)でHollyland Mars 300を使用して全く問題無かったから尚更だ。
それ以降Mars 300は使わず、結局20mのSDIを伸ばして有線で映像を持ってきている。
とはいえこの現場は電車移動なのでやはり長尺のケーブルは非常にかさばる。出来ることならワイヤレスで送信したい。
ということで少しコストは高かった、2025年7月現在最も安定しているだろうワイヤレス伝送機Accsoon CineView Master 4Kを購入したという経緯だ。
95mでの長距離テスト
まずは「95m離れても遅延は増加しないのか?」という点をテストしていく。
非常に田舎の住民が少ない、またはいても高齢者でWi-Fiという単語すら知らない集落の普通の道路で検証した。
カメラから95m離れた地点もほぼフラットで遮蔽物もない。非常に条件的には優れている。
しかしイベント会場を想定するとだいたいこんなもんだ。
会場に2.4GHz帯のWi-Fiは飛んでいるかもしれないが、基本的には同じフロアに送受信機があることを想定している。
今回のテストでは
EOS R5Cから一旦Micro Converter BiDirectional SDI/HDMIにHDMIで出力する。
その後SDI OUTはそのまま95mのSDIケーブルでShogun7に、
HDMI OUTはCineView Master 4Kに接続し、受信機のSDI OUTをShogun7に接続している。
Shogun7はSDI入力の映像をISO Recする機能が備わっているので、入力のソースは同じタイミングで同期された状態で録画がされる。
これにより、同じタイミングで録画されたデータのタイムコードにどれくらいズレがあるかを確認し遅延の大小を検証するという方法だ。
95m離れた地点では2〜4フレームの遅延
結論から記載すると、95m離れたところで遅延は最大4フレーム。
他のYouTuberが検証している最短2フレームから若干遅れてはいるがほぼ誤差と言えるだろう。
実際にタイムコードを検証したところ、遅延は2〜4フレームで推移している。
電波状態が良い場合はこの遅延を常時維持してくれると思う。
受信機の高さが下がると乱れる
受信機の近くに僕がしゃがんだり、肩の高さに持っていた受信機を地面に置いた瞬間一瞬映像が途切れた。
電波の特性上地面付近は到達しにくいのだろう。
また、人間が存在するため人間に電波を遮断され電波状況が著しく悪化するのだろう。
電波状況が悪化したタイミングでは最大5秒ほどの遅延が発生していた。
もはや5秒は遅延ではなく電波を正常に受信出来ていないと言って差し支えないだろう。
結論:距離は遅延にほぼ関係無い
結論としては95m離れたとしても遅延が拡大することは無かった。
ただし、受信感度により遅延が拡大することはある。
距離による遅延は関係無いが、
距離による受信感度の影響で遅延が拡大することはある。
これが今回の結論となる。結局、一番重要なのは「電波状況」ということだ。
ただし、今回のテストはほぼ直線距離で95m。そして遮蔽物もなく人間もほぼいない。
この状況で95m離れたら電波が途切れる場面が出ていた。
今回の結果を考えると、イベント中継で本線として使うのは厳しいと言わざるを得ない。
バッテリー駆動時間のテスト
次の検証内容はバッテリー駆動時間だ。
今回はFOMITOというNP-F970バッテリーの互換品を使用した。
このFOMITOのNP-F970バッテリーは2020年9月20日に購入したものだ。
これはVimecoから互換バッテリーを提供してもらった時に性能チェックをしている。
若干SONY純正NP-F970バッテリーよりも容量が多く、NINJA Vの駆動時間も長くなる比較的性能が良いバッテリーだ。
具体的な内容は下記記事で確認して欲しい。
本体にもバッテリー残量表示は一応ある
一応、CineView Master 4Kの側面にある液晶にバッテリー残量がパーセント表示される。
実運用ではこの表示を見ながらバッテリーマネジメントをする形になる。
しかしこのパーセント、実は若干正確性に欠ける。だからこそある程度の目安を知っておきたい。
安全圏は40%まで。約5時間の駆動時間
FOMITOのNP-F970バッテリーを使ったAccsoon CineView Master 4Kの駆動時間は下記の通り。
| 経過時間 | 表示残量 |
|---|---|
| 1時間 | 83% |
| 2時間 | 72% |
| 3時間 | 61% |
| 4時間 | 52% |
| 5時間 | 45% |
| 6時間 | 33% |
6時間まではバッテリーの残量表示を追うことができたが、それ以降7時間経過を待たずに電源は落ちていた。
つまり30%以下になったどこかのタイミングで電圧が大きく減少し駆動出来なくなったということだろう。
実際に表示内容として信頼できるパーセントは40%辺りがボーダーラインになりそうな気がする。
NP-F970は重過ぎ。実際はもっと短い。
NP-F970バッテリーを使い確実に使用できる時間としては4〜5時間が目安となる。
しかしそれはNP-F970バッテリーを使用した場合。現実はもっと短くなる可能性が高い。
というのもNP-F970バッテリーが重過ぎる。
CineView Master 4KにNP-F970をつけると1kgあるんじゃないかっていうレベルで重量が出る。
これをPanasonicのカムコーダーAG-CX350にマウントして手持ち撮影をしたことがあったが、こんなのは手持ちで撮影する重量ではない。
CineView Master 4K自体も重い上に、さらに重量物であるNP-F970が接続される。
全体の重心も上に上がってくるし、ちょっとカメラを下にふっただけで、前に倒れそうになるのを強く支える必要が出てくる。
実際の運用ではNP-F570やNP-F770が推奨されるだろう。
NEPの大容量バッテリーを使うのがもっとも良いだろう。
NEPの大容量バッテリーはNP-F570のサイズでNP-F770の容量を持っている。
小さいサイズで1個上の容量を手に入れることが出来る優れものだ。
CineView Master 4Kの重量を軽くしつつバッテリー駆動時間を伸ばすのに最適なバッテリーだと言えるだろう。
結論:CineView Master 4Kの本格運用はまだ早い
運用テストをした結果、「まだ本線利用するのは無理。バッテリー駆動時間も重量とトレードオフでまだ現実的ではない」という結論にならざるを得ない。
たった95mで接続が安定しない場面が出てしまう以上、イベント会場で試すにはリスクが高すぎる。
バッテリー駆動時間を伸ばそうと思ったら重いバッテリーをつけざるを得ない。
これではカメラマンの負担が大きすぎる。
やはり「最悪途切れても大丈夫なライン」で使用するという前提はまだ覆されない印象だ。
最近ではHollylandから新しくPyro Ultraという無線伝送機材が発売された。
ただこれはレビュー動画を見た限り、CineView Master 4Kよりも遅延が大きい印象だった。
しかもCineView Master 4Kよりも2倍近く高い。
20万かけてあの性能はちょっと試せない。
CineView Master 4Kもその半額とはいえまだまだ本線では運用するのは難しい。
結論としては非常につまらない、「結局有線が最強」という話になる。








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