2024年2月下旬にZOOMから新しく発売された32bit フロートハンディレコーダー H1essential / H4essential / H6essential。
3つのラインナップがあるが今回 H6essentialを購入したのでレビューしていこうと思う。
前提として僕はH6essentialにはSONYの業務用ワイヤレスマイクURX-P03dとUTX-B40のセットを接続することと、会場のPAからもらうラインアウトを入れるつもりだ。
かねてから32bitフロートの製品は買いたいと思っていた。発売と同時に「欲しいものリスト」に追加したのはRØDEの32bitフロートワイヤレスマイクWireless PROだ。
しかし僕の業務では常時2人~4人の登壇者がおり、Wireless PROを使用する場合2セット必要になる。
執筆時点でWireless PROの販売価格は61,000円~71,000円。2セット用意するとなると軽く10万円を超えてくるので手が出せずにいた。
RODE Microphones ロードマイクロフォンズ Wireless PRO ワイヤレス プロ デュアルチャンネルワイヤレスマ...
Wireless PROをかねてからほしいと思っていたが、現在所有しているURX-P03dとUTX-B40のセットを2セット4チャンネル分直接収録できるレコーダーが出たということでH6essentialはすぐに飛びついた。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
目次
動画レビュー
H1e/H4e/H6eの概要
photo via PRONEWS
今回新しくZOOMから発売された32bitフロートに対応したハンディレコーダーは【H1essential / H4essential / H6essential】の3つのラインナップがある。
簡単にそれぞれの仕様について理解しておいて欲しい。
横スクロールできます。
H1essential | H4essential | H6essential | |
---|---|---|---|
ビットレート | 32bit | ||
サンプリングレート | 44.1kHz/48kHz/96kHz | ||
マイク | 90°XYステレオ方式 | ||
ヘッドホン端子 | あり | ||
ライン入力端子 | あり(3.5mmジャック) | – | |
ライン出力 | ー | あり 3.5mm LINE OUT |
|
バッテリー | 単4電池2本 | 単3電池2本 | 単3電池4本 |
駆動時間(アルカリ電池) | 約10時間 | ¥24,900 | ¥34,900 |
最大入力音圧 | 120 dB SPL | 130 dB SPL | 135 dB SPL |
XLR/TRS コンボジャック | ー | Input1~2 | Input1~4 |
価格 | ¥11,900 | ¥24,900 | ¥34,900 |
【2024年3月15日追記】
H1essential / H4essentialは3.5mmジャックのLINE INがありプラグインパワーに対応している。逆にH6essentialはコンボジャックによる入力のみとなるので3.5mmジャックによるプラグインパワーのマイクを使いたい場合は注意が必要だ。
H4essential / H6essentialはLINE INとコンボジャックの入力がそれぞれあるが、H1essentialは90°XYステレオ方式の入力のみとなっている。
プラグインマイクなどを入力したい場合はH4essentialかH6essentialを購入する必要がある。
ミラーレスなどのLINE INに入れる場合は、H1essential / H4essentialはヘッドホンアウトと共通になるが、唯一H6essentialのみヘッドホンアウトとは別にLINE OUTを搭載している。
耐音圧はH1essentialが最も低く120 dB SPLだ。これはZOOM曰くスタジオでロックバンドの演奏を録音しても割れないレベル。とのことだ。
H4essentialの耐音圧は130 dB SPLで、10dB SPLの差しかないが、H1essentialに比べ約3倍の振幅を録音することが可能だ。
130 dB SPLは「肉体的苦痛を感じる強さの音」とされているらしい。おおよそではあるが削岩機がそれに当たるらしい。
H6essentialの耐音圧は135 dB SPLで、最高性能を備えており100m先のジェット機の音でも歪み無く録音できるレベル。とのことだ。
H6essentialの外観
それではH6essentialの開封と外観を見ていこう。
まず化粧箱は非常にシンプルなダンボールでパッケージが白黒で印刷されている。
同梱物は
- 本体
- 90°XYステレオ方式
- 各種書類(保証書・注意書など)
マイクを取り付けていない状態での本体正面。マイク/各入力の録音ON/OFFスイッチとミキサーをワンタッチで呼び出せるミキサースイッチがある。
マイクを取り付けずカバーをつけた状態の上面。
本体左側面。チャンネル1とチャンネル3のXLR/TRS コンボジャックが2口とボリュームダイヤル(スピーカーまたはヘッドフォンから出力される音量を調節)、ヘッドホンアウト、USB-C、LINE OUT。
ヘッドホンアウトとは別にLINE OUTがあるのはH6essential唯一の機能。
本体右側面。チャンネル2とチャンネル4のXLR/TRS コンボジャックが2口とMicro SDカードスロット、セレクトダイヤル、エンターキー。セレクトダイヤルとエンターキーを使ってメニューを選択していくUIになっている。
本体底面。電源ON/OFF/HOLDスイッチとREMOTE端子。カバーを外すとBluetoothアダプタを接続する端子が隠れてる。
マイクカプセルカバーをズラすにはカバーのツメ押してズラすとスムーズに外れる。
ただし、この操作が若干やりづらい。カバーのツメを押し込む形になるのだが、その状態で『手前に引く』という方向に力を加える形になるので、押してるものを引くという少しやりづらい方法になっている。
この辺りは旧バージョンのH6で採用されていた方法の方がやりやすいだろうと思う。
また以前のH6のマイクカプセルとは互換性がないので注意して欲しい。
H6essentialのサイズと重量
マイクをつけた状態のH6essential。実測値は画像の通り。
ちなみにマイクをつけない状態での実測値は画像の通り。
マイクを外して電池を入れていない状態の重量。
マイクを外し電池を入れた状態の重量。
マイクを着けて電池を入れていない状態の重量。
マイクを着けて電池を入れた状態の重量。
H6essentialの性能について
【2024年3月16日追記】
H6essentialで録音した場合に生成されるファイルは
- XYマイク(ステレオ)
- 各コンボジャック(モノラル)
- マスターミックス(ステレオ
スペック表に「最大同時録音トラック数 8」とある。これは混乱しやすいが、8系統の入力を同時に録音できるというわけではない。
まだ未確認情報ではあるが、XYマイクからのステレオ入力が1~2トラック。INPUT1~4のモノラル入力が3~6トラック。そして、最後に収録上で生成されるマスターミックスがステレオで7~8トラック。という計算になると予想される。
確かにステレオ収録を加味すると8トラック収録できてはいるのだが、実使用上は5トラック収録と考えて良いだろう。
おそらく2024年夏に発売予定の2系統追加収録できるカプセルEXH-6eであれば、INPUT1~6全てがモノラルで実使用上ちゃんと6トラック収録がおこなえるのではないかと思う。(そこにマスターミックスステレオで8トラック収録となる)
各トラックのパラ収録は当然おこなえるとして、マスターミックスも一応生成されるのはありがたい仕様だ。
3つの検証結果
今回H6essentialを購入した理由としては主に3つある。一つ目は前述したとおり、所有しているURX-P03dとUTX-B40を接続しワイヤレスマイクを擬似的に32bitフロート化したい。
2つ目はステレオマイクの音質だ。手持ちのショットガンマイク Sennheiser MKE600との音質を比較した。
3つ目はH6essentialをハンディレコーダーとして手持ちで録音した場合のハンドリングノイズ検証だ。
URX-P03dとUTX-B40との相性
まずはじめにおこなった検証は手持ちのURX-P03dとUTX-B40をH6essentialと組み合わせることで擬似的に32bitフロート化するというものだ。
結論から言うと、これは実現することはできない。
理由としては大きい入力がUTX-B40に入った時点で割れてしまうからだ。
大きい入力がありUTX-B40の入力時点で割れた場合、割れた音がURX-P03dに送信される。そして割れた音がH6essentialに入力される。
いくら32bitフロートだとしても、そもそも割れた状態で入力された音はどうすることもできない。
つまりUTX-B40への入力時点で割れない様に設定をすることは必須であった。
現時点での対応策としてはUTX-B40への入力時点で音割れを防ぐためにアッテネーターと9dB当てて、URX-P03dのアウトプットレベルを12dBに設定した。
URX-P03dのアウトプットレベルを上げる理由としては、H6essentialへの入力レベルを高くするためだ。
いくら32bitフロートとはいえ小さいレベルで入力された音を編集でゲインを上げると、一緒にノイズも持ち上がってしまうのでなるべく入力レベルは高く保っておいた方が良いという判断だ。
RØDE Wireless ProやDJI Mic2であれば、マイクに入力された時点で32bitフロート録音されるため、それ以降どうなろうがもはや関係ない。
そういう意味では完全な安心を得るためにはやはりRØDE Wireless ProやDJI Mic2の方が良いのかもしれない。
とはいえ、今までURX-P03dとUTX-B40の組合せで毎回音割れ防止のため事前調整を毎回おこなっていたので、引き続きその作業はやっていこうと思う。
Sennheiser MKE600とのマイク比較
Sennheiser MKE600はショットガンマイクでH6essentialのマイクは90°XYステレオ方式でそもそも用途が違う。
そして音質に関しては最低限のレベルに達していれば良し悪しではなくその人の好みに依存すると思っている。
どちらが良いの判断はせず、実際に音を聞いてもらえればと思う。
音量には注意。なおH6essentialのみステレオ音源となっている。
【Sennheiser MKE600の音源(マイクとの距離37cm,ゲイン+18dB)】
【ZOOM H6essentialの音源(マイクとの距離37cm,ゲイン+15dB)】
【Sennheiser MKE600の音源(マイクとの距離75cm,ゲイン+18dB)】
【ZOOM H6essentialの音源(マイクとの距離75cm,ゲイン+15dB)】
【Sennheiser MKE600の音源(マイクとの距離115cm,ゲイン+18dB)】
【ZOOM H6essentialの音源(マイクとの距離115cm,ゲイン+15dB)】
H6essentialのハンドリングノイズ検証
報道現場などでたまにみるハンディレコーダーを手に持った状態で対象の音声を録音している風景。僕はそういう使い方をすることは無いが手持ちで録音する人がいるかもしれないので一応検証した。
この検証に関しても実際の音源を聞いてもらえればと思う。結論から言うとハンドリングノイズはかなり乗る。手持ちで録音する場合は注意が必要だ。
【H6essential 手持ち録音】
つづいて自撮り棒の様やミニ三脚などを持った状態で録音することを想定したハンドリングノイズ検証をおこなった。
【H6essential ミニ三脚取付手持ち録音】
H6essentialの良いところ悪いところ
それでは最後にH6essentialを実際に使って良かったところと悪かったところを挙げていきたいと思う。
執筆時点ではまだ購入から数週間しか経過していないため、ファーストインプレッションという形でご理解いただきたい。
今後使い込んでいくうちにアップデートがあれば追記していきたいと思う。
H6essentialの悪かったところ
マイク端子カバーが外しづらい
これは先述もしたがロックを掛けているツメを押し込みながら手前に引くという手順のため若干取り外しがしづらいという欠点がある。
今はまだ慣れていないからなのかもしれないが、このUIに関しては旧モデルの方が使いやすいような気がする。(旧モデルは使ったことが無いが。)
単三電池4本入れると少し重い
XLR/TRS コンボジャックを4チャンネル搭載し、それぞれ+48Vファンタム電源を供給できることを考えると仕方ないのかもしれないが、単三電池4本を入れるとさすがに重く感じる。
ちなみに僕が使用している単三電池はPanasonic eneloop Proだ。他の単三電池に比べ重量が違うのかはわからないが参考になれば幸いだ。
参考までにPanasonic eneloop Proは2500mAhだ。
パナソニック(Panasonic) 【Amazon.co.jp限定】 パナソニック エネループ プロ ハイエンドモデル(大容量モ...
そしてこの重さが影響してミラーレスカメラの上に乗せて運用することはオススメしない。重さもネックにはなるのだが、カメラの上に乗せるとなると大きさもネックになってくるので、カメラの上に乗せてしようしたい場合はH1essentialかH4essentialを使用することをオススメする。
自動でRecがON/OFFされない
悪い点では無いが、今後の改善を期待する点として、録音のON/OFFを自動と手動を選べる様にして欲しい。
H6essentialは常時全てのチャンネルで録音されるわけではなく、自分でどのチャンネルを録音するのか選択する形を取っている。
90°XYステレオ方式のマイクカプセルを付けていても正面のMICボタンを押してOFFにすると録音はされない。
入力が無いチャンネルを録音しないことによってメディアの節約やデータの整理がしやすくなるメリットがある一方、INPUT1~4は接続しただけでは録音されないので注意した方が良い。
チャンネル1にXLR端子を接続したとしても、チャンネル1の録音をONにするという作業を忘れると録音されない。
逆RECをかましたり、単純に録音をONするという作業を忘れたりするというミスが発生する可能性がある。
音声の入力を感知したら自動で録音チャンネルとして選択される機能があった良い。
H6essentialの良いところ
XLR/TRS コンボジャックであること
基本的にはXLR端子が標準であると思われるがコンボジャックを搭載してくれたことは非常にありがたい。
たまに会場のPA機器からのアウトがフォンしかない場合がある。
XLR出力のMASTER OUTは会場のスピーカーに接続されており、AUXしか空いてないという場合はフォンで出さざるを得ない場合もある。
そんなとき変換を持っていなかったら絶望するためコンボジャックだったというのも購入を決めた大きな要因だ。
将来拡張を期待できる
デフォルトでは90°XYステレオ方式のマイクカプセルが同梱されている。
2024年夏の販売予定ではあるが、MSステレオショットガンマイクSSH-6eと外部入力拡張カプセルEXH-6eの販売がアナウンスされている。
現在の想定ではINPUT1~4の4チャンネル入力があれば事足りる予定だが、今後更に入力が必要とされた場合は2チャンネル拡張できる外部入力拡張カプセルEXH-6eも選択肢に入れることができる。
まとめ
現時点のファーストインプレッションとしては必要な機能は全て搭載しており細かい外装やUIについては改善の余地があると思うが、機能に関しては全く問題無く求めている機能を全て備えている。
但し注意して欲しいのが、外部入力を2チャンネルを超えておこないたいという希望が無い場合はH4essentialで十分だと思う。
H4essentialでも90°XYステレオ方式のマイクカプセルが同梱されているしINPUTは2チャンネル分おこなえる。
何より単三電池2本で駆動可能なので重量やサイズがH6essentialに比べると一回りほど小さい。
3チャンネル~4チャンネルの外部入力が絶対に必要だ。という用途以外の方はH4essentialで十分だと思う。
なお、カメラの上に乗せて使いたいという用途の場合はH1essentialがベストチョイスだと思われる。
>H1essentialは90°XYステレオ方式の入力のみとなっている。
>プラグインマイクなどを入力したい場合はH4essentialかH6essentialを購入する必要がある。
違います。
H1essentialにはステレオミニのLINE-INがあり、プラグインマイクへの給電もこの端子からなされます。
また逆に、H4essentialとH6essentialにはステレオミニのプラグインマイク/LINE-INの端子を有しておらず、一般のプラグインマイクを挿せるかどうかは、プラグの形状を合わせたとしても、メニューでファントム電源の電圧を下げられるかどうかをチェックする必要があります。
ご指摘ありがとうございます。
改めて調べてみたところおっしゃる通りH1essentialには3.5mmのLINE INがありH6essentialには3.5mmのLINE INはありませんでした。またH4essentialには3.5mmのLINE INはあるようで、プラグインパワーにも対応しているみたいでした。
H6eの同時録音が8トラックというのが未だにどうやればできるのか不明。。。
カプセル変換で未だに買えませんが標準のXYマイクを殺して2系統追加でも結果的に6系統。将来拡張されるカプセルが発売されるんですかね。
音の大小差が激しいBrassBand(吹奏楽ではない)の録音には32bitFloatはありがたい限りです。
8トラック収録の情報、僕は初めて聞きました。確かにスペック表を見ると最大8トラックとありますね。
恐らくですが、収録フォーマットとして、1~2chがXYマイク(ステレオ)という計算で、3ch~6chがコンボジャックのモノラル、そして収録上では96kHz以外ではマスターが収録されるのでそれがステレオ?だとして最大8トラックという計算になるのかも…?
初めまして。
8トラック録音についてマニュアルを確かめたところ、各トラックのパラデータに加えて
「44.1k,48kHz時 TrLR:すべてのトラックをステレオミックスしたファイル」
が生成されるようですので、仰ってる通りの仕様についての記載かなと思います!
ZOOMのレコーダーはH4n、R24、Q8、F1、M3と使い続け、M3で32bit floatの安心感を実感したので、そのうち導入したいなあと注目しております。
情報ありがとうございます。32bit floatを使いこなしていらっしゃるんですね。今回のH1e/H4e/H6eは価格と機能を見るとコスパは結構良いのではないかと思います!
>ikusugi様、pocomo様
ありがとうございます。
なるほど、生成されるファイル込みなのですね。
H4eとH6eを両方持っています。
H4eでは、現時点では内蔵マイクがデュアルADコンバータに対応していない点を明記しておいた方が良いかと思います。
H4eの取扱説明書はWEBで公開されていますので、この違いを理解した方が良いです。
これを理解すると「多くの人がH4eで十分」とはならないはずです。
コメントありがとうございます。H4eにも『デュアルADコンバータ搭載』の記載があるので勘違いしていましたが、あくまでINPUT1~2に限った話で、XYマイクに限ってはH6eのみがデュアルADコンバータ搭載ということですね。