いつも少し遅れてレビューするのが僕のスタイルということで、2019年8月に発売開始されたDJIのミラーレスカメラ用に設計された片手持ち3軸ジンバルRonin-SC
こちらを購入しましたので、使用感をレビューしていきたいと思います。
こちらの使用用途としては主にEOS Rと組み合わせて使用する予定でいます。
というかそうやって使っています。
ミラーレス用ということで、僕が持っているGH5/GH5Sでも使えるのですが、ジンバルに乗せて使う仕様上オートフォーカスに頼らざるを得ない場面が多々ありまして、GHシリーズのオートフォーカスにはいささか不安を感じるのでEOS Rでの運用という形でやっています。
ちなみに僕はRonin-Sも持っていますので、バカみたいにRonin-SとRonin-SCの2台体制という状態です。
機材を次から次へと買ってしまうのはもはや病気ですね。
ただし、僕は今回ムダに買ったわけでは無く明確なRonin-SとRonin-SCと使い分けをするつもりです。
それぞれの組合せは決まっていて
Ronin-S にはEOS R+RF28-70F2L USM
Ronin-SC にはEOS R+EF24mmF1.4 USM
という形で完全に使い分けています。
Ronin-SとRF28-70F2L USMの組合せは、仕事での本気撮影の時に使用。
Ronin-SCとEF24mmF1.4 USMの組合せは、なるべく機材重量を減らしたいデイリーのYoutube用動画などで使用。
という形で完全に分業制で運用しようと考えています。そんな風に使っていったRonin-SCとEOS R+EF24mmF1.4 USMの使用感で購入レビューを書いていきたいと思います。
ちなみに買ったのは通常パッケージのRonin-SCでProコンボ版ではありません。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
Ronin-Sとの比較
もうSEO上位のブロガーさんが載せてらっしゃるとは思いますが、一応Ronin-Sとのスペック比較もさせて下さい。
Ronin-S | Ronin-SC | |
---|---|---|
実売価格 | ¥92,800 | ¥51,300 |
本体重量 | 1.8kg | 1.1kg |
最大積載量 | 3.6kg | 2kg |
最大バッテリー駆動時間 | 12時間 | 11時間 |
主な重要項目はこのような状態になっています。
今回の目玉はなんと言っても重量が約40%軽量化となっているところです。
40%軽量化というと非常に大きな進歩のように感じますが、グラムで表現すると700gくらいなんですよね。
正直最初は
とか思ってました。DJIさんスイマセン。
外観(Ronin-Sと比較)
正面
背の高い方がRonin-Sです。
大きさ以外、正面のデザイン変更はありません。
左側面
Ronin-Sにはフォーカスダイヤルが付いていますが、Ronin-SCではその部分が削られています。
右側面
背面
細かいRonin-Sからの変更点
赤字メリット、青字はデメリットとして僕が感じた変更点を挙げてみます。
各軸にロック機構
これはもう色々な人が説明されていますので、今更説明する必要も無いかと思いますが、各軸パン軸・チルト軸・ロール軸それぞれを折りたたんだ状態でロックすることができる様になっています。
地味に便利ですね。ぷらぷらしないので電車での持ち運びや人混みでバッグに直刺しの状態でもあまり気にならなくなります。
ロール軸の変更
上記のロック機構に伴いRonin-Sではロールの調整メインのロール軸とカメラを動かすプレートの2つで調整可能でしたが、Ronin-SCではロールのモーターが付いているロール軸の部分は完全固定となっており、カメラを付けるプレートでロールのバランスを調整する必要があります。
ロール軸があまりに伸びすぎているとパン軸の部分に干渉してしまうので、致し方ない部分ですね。
プレートの固定とロールのバランス調整レバーが統一
Ronin-SCではカメラに取り付けたプレートとそれを付けるマウント部分とロール軸の調整をおこなうレバーが統合されました。
Ronin-SではプレートとRonin-Sを取り付けた状態でロール軸の調整をおこなうことができましたが、Ronin-SCでは両方を同時におこなう必要があります。
ちなみにこれによって、前後のバランスも同時におこなわなければいけなくなりました。
そのためにRonin-SCではカメラに取り付けるプレート側に目印を付けられるよう、小さい可変式ダイヤルが付属しています。
前後のバランスを整えたら、この小さいダイヤルを移動しプレートがどの位置でバランス取れるかを擬似的に覚えさせておくことが可能になりました。
ただ実際、細かいバランスを取るのに、前後と左右移動が同じネジで固定されるというのは思った以上にやりづらいな。と感じました。
それぞれ動き始めるゆるめ具合が若干違うので、前後の移動はできるケド、左右の移動ができない。
左右の移動をさせるためにゆるめすぎると前後の移動がすぐ動いてやりづらい。など本当に細かい所が気になります。
ただ、これはRonin-Sを使っているから。というのもあるのかもしれません。
これが初見で「こういうモノです」と言われてしまえば、納得してそれを普通に使いわけるのかな。
三脚の足の裏側のデザインが変わった
メリットでもデメリットでもどっちでもないです。
ソフトウェア的進化も色々
iOS/AndroidのRoninアプリと連携したソフトウェアも進化しました。
Force Mobile
接続されているスマートフォンの傾きを検知してそれと同じ方向にRonin-SCを制御させることができる。
これにより離れた位置からRonin-SCをコントロールすることが可能になります。
スマートフォンを右にパンすれば、Ronin-SCも右にパンします。
あるいは下にチルトすれば、Ronin-SCも下にチルトしていきます。
僕はこれを一番使ってみたいです。
格闘技の生放送時、リングサイドにこのRonin-SCとカメラを設置してズームはできませんが、カメラワークだけ遠隔操作を行えたらさらに生中継の質を上げられると考えたので。
実際にこのForce Mobileがどの程度の距離まで反応するかはテストしてみましたので動画をご覧ください。
一応最大距離は24.9 m(見通し)となっていますが、実使用でどこまでいけるか。試してみました。
ActiveTrack 3.0
こちらはDJIのドローンやOSMO Pocketなどでもおなじみのトラッキング機能ですね。
スマートフォンをカメラの上に載せて、スマホのカメラで写る設定した被写体を追い続ける機能。
但しこの注意点として、あくまでスマートフォンのカメラに写っている被写体です。
スマートフォンのカメラは26mm〜28mm前後の画角が多いため、Ronin-SC側に載せている焦点距離によっては被写体を中央に補足できない可能性があります。
その辺もどんな感じになるのか試してみましたのでご覧ください。
大きなソフトウェアの進化はこの2つになります。
Force Mobileは僕の場合明確に使う場面を想定して購入したのですが、一般の人達ってこれ使う機会あるんですかね?
ActiveTrack 3.0は自撮りYouTuberとかならきっと重宝しそうですね。
僕はYouTuberではないので、遊びで使っていきたいと思います。
ただ、これを使うとカメラのホットシュー部分にスマホフォルダーを取り付けるのですが、これをおこなうと結構バランス調整がさらに難しくなります。
最初からスマホを取り付けた状態でバランス調整をやり直さないといけません。
スマホ無しの状態でバランスを取り終えて、その後今度はスマホ付けてActiveTrack使おうーみたいな感じですぐにシステムを移行できる感じではありません。
それぞれでちゃんとバランスを取り直して設定しないとけないのはデメリットですね。
悪かった所
実際にEOS RにEF24mmF1.4 USMつけた状態でRonin-SCを使った感想をお伝えしたいと思います。
基本的にはRonin-Sとの比較をした状態の話になるかと思います。
ただ、悪い所を単純なデメリットと考えるか、小型軽量化から生まれた妥協点と捉えるかは人それぞれかと思いますので、ご自身でそれは無理だ。とかそれは妥協できるわ。とか参考にしていただければと思います。
パワーが明らかに落ちた
目に見えて、触ってみて明らかに感じる変更点です。
Ronin-Sの最大積載量3.6kgに対して、Ronin-SCは最大積載量2kg。
Ronin-SはRonin-SCの1.8倍のペイロードが可能なのでそのモーター出力の差は歴然です。
Ronin-Sはモーターの力が強かったので、その分オートチューンの幅も広くザックリバランスでも問題無く運用できたのですが、Ronin-SCの場合しっかりバランスを整える必要があります。
そこからバランスが崩れ始めるとモーターが支えきれなくなり傾き始めてしまいます。
バランスを完璧に揃えた状態で、ホットシューにカメラを載せてActiveTrackを使おうと思ったら、バランスが崩れてそのまま下を向いてしまうという現象が発生しました。
なので、バランスは完全に調整するようにします。
軽いケド…
実際に700gの差は非常に大きい。と感じました。
Ronin-SからRonin-SCに持ち替えたとき「軽っ!」って言いました。
スゴい違いを感じました。Ronin-SCメッチャ軽いです。
でもやっぱりカメラ乗せるとそこそこの重さです(笑)
乗せているカメラとレンズがEOS RとEF24mmF1.4 USMという一応Lレンズだからなのかもしれませんが、片手持ちを長時間は結構しんどい。
Ronin-SCは軽くなったのでビデオブログ用に色々な所に日常撮影で使おうかと思いましたが、そういう用途でも結構勇気と気合いが必要です。
ただ、それでもRonin-Sよりかは数倍持ち運びのハードルは下がりました。
用途の違いですね。
ガチ撮影の時は気合い入れますし、予算に多少余裕があるのでRonin-Sを持っていくことができますし、両手で持つこともできると思います。
ただ、自分の趣味用に使おうとしているRonin-SCは軽いとは言えやっぱり気合いを入れる必要があります。
2kg以内でも重いor長いレンズはムリ
重量的には問題無い積載量だったとしても、レンズ自体が重いとカメラ本体を後方にずらす必要が出てきます。
丁度EF24mmF1.4 USMがそうなのですが、プレートの一番後ろにEOS Rを付けてもプレートの一番前でRonin-SCと固定する必要があります。
ただ、この状態だとアイカップ部分がRonin-SCの軸に干渉し、カメラの上チルトorローアングルへの移行ができません。
Ronin-SC後方のロール軸が完全にEOS Rのアイカップ部分に干渉するので上下の動きが結構制限されてしまいます。
これの解決方法としてRonin-SC用のカウンターウェイトを取り付けるプレートが考えられます。
Ronin-S用のカウンターウェイトマウントプレートは既に販売されていますがRonin-SC専用品の販売はまだです。
ですが、10月販売開始予定ということで既に予約受付開始されています。
DJI Ronin SC専用カウンターウェイトプレート2420 photo via SmallRig
ちなみにSmallRigは新製品販売時プレオーダー時期には特別割引価格となりますので、SmallRigのメールマガジンなどに登録しておくとこういった製品をいち早くそしてお得に入手することができます。
ということで僕にはこのカウンターウェイトプレートが必要なので買いました。
バッテリーの減りが早い
バッテリーの減りが早いと言ってもRonin-Sと比べての話ですが。
実際のメーカー公表連続使用時間は11時間ですが、上記の様にバランス調整が結構シビアです。
少しでもバランスが崩れた状態で使用しているとゴンゴンバッテリーが減っていく印象です。
じゃあバランスをしっかり整えてから使えば良いじゃないか。という話なのですが、
これも前項で挙げたようにロール軸に干渉するから完璧にバランスを取ることができないんですよ。
つまり、若干前に重心が移動した状態で使う形にならざるを得ない状態なので必然的にパワー出力が上がってしまう。
バッテリーの消費をなるべく抑えたいけど、バランスが取れないから不安定なまま使わざるを得ない。
結果、モーター出力が上がりバッテリーの消費に繋がってしまう。
というわけです。
まぁ多分これもSmallRigのRonin-SC用カウンターウェイトプレートが到着すれば解決すると思いますけど。
良かった点
軽い
さっき重いとか言ってたくせにどうなってるねん。
と言われそうですが、やっぱり軽くなってます。これは完全に良い点です。
カメラ乗せるとそこそこ重くはなるけど、やっぱりこの40%軽量化は非常に大きいです。
EOS Rはボディ内手ぶれ補正が付いていませんし、EF24mmF1.4 USMも手ぶれ補正は付いていません。
でもこの装備でどうしても動画を撮りたい僕ですので、Ronin-SCなら使える!と思いました。
カメラを回す機会が増えるのは明らかだと感じています。
コンパクト
40%の軽量化に伴い大きさも大幅に小型化されています。
Ronin-Sだと重いし大きいしで持ち運びにかなりのハードルがありましたが、Ronin-SCになって筐体自体もかなり小さくなりました。
これにより、バッグの中に収納もしやすくなりました。
これにより、使わないときはバッグに入れておくという使い方もできる様になりましたし、少しだけバッグの空きがあってRonin-Sは入らないけどRonin-SCなら入る。なんていう場面もありました。
そうしたときに丁度良い大きさで持ち運ぶことができる様になりました。
はっきり言ってこれだけです。
ですがこの2つのメリットが非常に大きいメリットとなります。
思ってたより微妙な点
Force MobileとActiveTrack 3.0はどうなの?という話ですがそちらについては正直まだよくわかりません。
この2つの機能についても少し触ってなんとなく機能を理解してみました。
そのファーストインプレッションとして思った事をちょっと挙げたいと思います。
Force Mobile
実際に使ってみるとかなり動きはスムーズですし、反応も良いと思います。
ただ、これの反応距離がどれくらいなのか?によって使い勝手が変わってくるかと思います。
僕は総合格闘技の生放送もやっていますが、その時に無人カメラ用としてこのRonin-SCを起用できたら非常に便利だと思いましたが、総合格闘技程の会場になった場合果たして機能してくれるのか?という疑問が未だに取れていません。
この辺りは実際に試合がある時に、休憩時間などでテスト使用してみないと具体的なことを述べられないと思います。
ただ、これは本当に使用する人が限られるのでは無いでしょうか?
ActiveTrack 3.0のここが気になる
自分でカメラを動かさないでトラッキングしてくれるなんて最高かよ!
って思いました。使うまでは。
実際使ってみて色々と気になるポイントがいくつかあったので、この機能に絞って気になったタイミングを挙げていきたいと思います。
まずトラッキング設定が難しい
Ronin-SCに乗せたカメラのホットシューに付属のスマートフォンホルダーでスマホを付けてマウントする形になります。
そして、あくまでトラッキングするのは“スマホのカメラに写っている被写体”を選択してそれをトラッキングします。
つまり自撮りする場合には、
- スマホのカメラに自分が写る位置に移動する
- スマホのカメラに写った自分をトラッキング設定する
この2つの工程をおこなう必要があります。
これ…。自分一人でどうやってやるの?
スマホのバックカメラに写る位置にいなきゃいけない状態で、そのスマホに写った自分を枠線で囲むため画面をタップする。
みんな自分一人の時はどうやってるの?
これ割と本気で皆どうやってるのか知りたいレベルで、僕は自分自身をトラッキングさせる設定ができないです。
スマホカメラの画角にしか対応できない
これ結構致命的な弱点だと感じます。
僕は一眼レフで動画を撮る理由って“ボケ”が一番だと思ってるんです。
もちろんハイビットレートの解像感とかもありますが、あのボケは一眼レフカメラのセンサーサイズだから可能な表現だと感じています。
そして、僕が普段使っているカメラEOS RだとEF24mmF1.4 USMになります。
この場合はほとんど問題ありません。
僕が使っているHUAWEI Mate20 proの標準レンズの画角は確か26mmとかなので、ほぼ画角が同じだからです。
ですが、もう一つGH5SにPanasonic LEICA 25mm f1.4 SUMMILUXの装備があります。
Panasonic LEICA 25mm f1.4 SUMMILUXは35mm換算50mmとなります。
一眼レフの換算50mmとスマホの26mm前後では画角が違いすぎます。
被写体を追い続けてくれるのは良いのですが、やはり換算50mmのレンズで使うとスマホのカメラと画角が違いすぎるので若干見切れてしまうタイミングが発生してしまいます。
こればっかりはどうしようもないんですかね。
スマホのカメラにテレコンとか付ければ良いのかもしれませんが、そこまでするのはちょっとね…。
スマホ乗せるとバランス難しい
ジンバルってバランス調整が命ですよね。
スマホをカメラのホットシューに乗せると結構バランスが崩れます。
もちろんその都度バランス調整をする必要があります。
Ronin-Sに比べてモーター出力が弱いので、そのままのバランスでスマホを乗せる運用するのは不可能です。
スマホを乗せることになったら、確実にバランス調整をし直す必要があります。
これが結構めんどくさい。
総括
とりあえず買って良かったと思っています!
やはり小型軽量化がこんなにも良いことで、ここまで違うモノか?!と驚きを隠せませんでした。
軽い軽いとは聞いていましたが、このRonin-SとRonin-SCとの重量の違いは実際に持った人にしか分からない違いだと思います。
それくらい、数値以上に軽くなったような印象を受けます。
ただ、バランス調整の幅が小さくなったこと、モーターのパワーが落ちたこと。
この二つはちょっと予想外でした。
これをデメリット取るか、小型軽量化に伴う妥協点と取るか。
そこが買うかどうかの分かれ目になるかと思います。
もし買う前にちょっと一日使ってみたいな。
という方がいましたら、ビデオエイペックスさんで早速Ronin-SCのレンタルも開始されていますのでそこで1日使ってみるのも良いかもしれません。
実際に一日持ってみると、重いけどRonin-Sよりか数十倍疲労感が違います。
Ronin-Sが1時間でキツいと感じるところを、Ronin-SCなら8時間くらい行けると思います。