中国の新興企業SYNCOがゲームチェンジを起こした。
以前、SYNCOというメーカーの製品はワイヤレスマイクG2(A2)をレビューさせてもらった。
当時の印象はどこだか分からないようなメーカーという感じだったが、今ではプロ向けオーディオ製品を数多く販売するメーカーとして名を馳せるようになった印象だ。
2024年4月15日SYNCOさんが突如ワイヤレスインカムXTALK X5の国内販売を開始した。
色々妥協点はあるだろうがワイヤレスインカム業界のゲームチェンジャーと成り得る可能性がある。
何が凄いってワイヤレスインカム5波で75,999円。安すぎる。
今回、僕からの猛プッシュでSYNCOさんに営業を掛けた結果、快くレビューを承諾してくれた。
あと少しでHollyland Solidcom C1 Proを購入しようとしていた筆者がXTALK X5を手に入れたので、実際の使用感をレビューしていこうと思う。
ワイヤレスインカムヘッドセットシステム, SYNCO XTALK X5 5人対応 全二重ワイヤレスインカム 複数セット組...
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目次
SYNCO XTALK X5動画レビュー
SYNCO XTALK X5の特徴
まずSYNCO XTALK X5の特徴を紹介する。
製品名 | XTALK X5 |
---|---|
最大接続人数 | 18人 |
実売価格 | 75,999円 |
連続動作時間 | 20時間 |
最大通信範囲 | 350m |
使用周波数 | 2.4GHz帯 |
その他スペック表に載らない特徴として【マスターフリー機能】【リアルタイムモニタリング機能】などがある。
マスターフリー機能とは
今回レビューするSYNCO XTALK X5にはマスターフリーという機能が備わっている。
SYNCO XTALK X5は通常であれば、赤いラベルがあるインカムがマスター(=親機)、青いラベルがあるのが子機となる。
親機や子機は常に固定で、これはHollyland Solidcom C1 / C1 Proのシリーズも同様だ。Solidcom M1に関してはベースステーションがあるため全てが子機とも言える。
しかしSYNCO XTALK X5は子機を【親機モード】に設定すると、子機が親機へと変貌する。
つまり全てが親機とも言えるし、全てが子機とも言える。
これが便利な場面としては、親機のバッテリーが切れてしまった場合やパーティを分けたい場合などが挙げられる。
通常、ワイヤレスインカムは親機を中継し各子機とペアリングする。
そのため親機が故障したりバッテリーが切れたりした場合、子機同士では通信することができない。
しかしSYNCO XTALK X5は仮に親機が故障したとしても別の子機を親機モードにすれば良いし、親機のバッテリーが切れたとしても子機を親機モードで設定すれば良い。
つまり何かトラブルが起きたとき、不測の事態が発生したときに対応がしやすいというメリットがある。
リアルタイムモニタリング機能
SYNCO XTALK X5には3.5mmジャックが存在する。
この3.5mmジャックにオーディオケーブルを挿すことによって、オーディオをモニタリングすることができる。
(3.5mmオーディオケーブルは自分で用意する必要がある。)
通常インカムを片方の耳に装着したら反対側の耳でモニタリングイヤホンをつける必要がある。
しかしSYNCO XTALK X5ではインカム内にモニタリングしたい音声を流すことができるので、片方の耳でインカムとモニタリングを完結することができる。
この機能は他社に無い機能で初めて使ってみたが思ったよりちゃんと使えて驚いた。(後に詳しくレビューする)
ただし、パーティ全員にモニタリング音声を共有するわけではなく、3.5mmジャックを挿したインカム内にだけ音声を出すので注意が必要だ。
SYNCO XTALK X5の詳細
レビューに入る前にSYNCO XTALK X5の同梱物を含め詳細を見ていこうと思う。
SYNCO XTALK X5同梱物
SYNCO XTALK X5は大きめのキャリーバッグに全て収納されている。
さすが精密機器を入れるためのキャリーバッグで四辺やフタの部分は硬い板が入っているのか、上から多少重い物を乗せても潰れることは無い。
僕はイベントに持ち込む時、このケースに入れたまま以前レビューしたDINGHANGのスーツケースに入れて持ち運んだ。
DINGHANGのスーツケースは高さが充分あるので問題無く入れられた。スーツケースのレビューは下記を見て欲しい。
SYNCO XTALK X5付属品
付属品は
- 親機x1
- 子機x4
- USB A to Micro Bx3
- 充電器x3
- バッテリーx5
- ワランティカード
- イヤーフォームクッション
画像には無いが、形状の異なるイヤーフォームクッションとマイク用のウィンドジャマーがある。
ウィンドジャマーについてはデフォルトでマイクに装着されていた。
残念ながら付属のイヤーフォームクッションの付け方はわからずどの様に使うか現状では把握できていない…。
付属のキャリーバッグはフタの部分に付属品を入れることができて本体は中に並べて収納する形になる。
またSYNCO XTALK X5のヘッド部分が隙間に入り込むよう設計された専用のスポンジがデフォルトで挿入されていて、運搬中でも適切に各インカムのスペースは確保された状態にできる。
XTALK X5本体を包んでいるポーチ。この質感は柔らかくて非常に良い。
厚みがあるわけでは無いのでクッション性は無いが生地は柔らかく優しく本体を包んでくれる。
充電器にはバッテリーが2個差し込むことができてUSBで充電することができる。
しかしこのチャージャーはMicro USBという規格になっている。
なお、このMicro USBの規格についてSYNCOさんへフィードバックしたところ『Type-Cへの変更が検討されている』とのことだ。
その仕様変更がどのタイミングで実施されるかは分からないが少なくとも次期モデルではType-Cでの充電が実現するだろう。
SYNCO XTALK X5 親機 詳細
SYNCO XTALK X5の親機は赤いラベルマークが貼られている。
上下の±ボタンはボリュームUP/DOWNボタンだ。
Aボタンは3秒長押しするとペアリング設定/ペアリング解除。8秒長押しすると親機モードのON/OFFが可能だ。
Bボタンを一度押すとノイズキャンセリングのON/OFF。長押しすると親機のみドミナントモードがONになる。
このドミナントモードが実際どういうモードなのかは未検証なので分かっていない。
ドミナントモードに関してSYNCOさんから下記の様に回答をもらった。
この際、Masterの声は他のリモートに正確に伝わり、リモートは声を聞くことができても話すことはできません。
親機はバッテリー込み184.2g。
この重量が重いのか軽いのかわからないが、筆者はイベントで約5時間装着しっぱなしだったが、耳が痛くなる等の症状は出てこなかった。
ヘッドセット自体の大きさも左右両方大きくするバッファがあるため頭の大きい人もそこまで気にする必要はなさそうだ。
SYNCO XTALK X5子機 詳細
SYNCO XTALK X5の子機はラベルマークが青いだけで見た目は親機とほぼ同じだ。
各種ボタンの機能も親機とほぼ一緒だ。Bボタンの長押しは親機だけの機能なので子機では単押しのみが動作する。
子機の重量はバッテリー込み184.6gだ。
親機との差は0.4gだがこれは誤差の範囲だと思う。着けた感じも親機のそれとほぼ変わらない。
余談ではあるが、マイクアームは180°可動することができる。
左右どちらの耳にも付けることができるので、各々好みに合わせて好きな方の耳に装着できるのも評価できる点ではある。
SYNCO XTALK X5 実際の音声
SYNCO XTALK X5の聞こえ方や2.4GHz帯による遅延などの詳しいレビューは動画を見てもらいたい。
SYNCO XTALK X5悪いところ
撮影協力:株式会社フルフォース・プロダクション
今回SYNCO XTALK X5を大阪と福岡で行われた総合格闘技のイベントで使用した。
300人~400人規模のイベントで、会場は常時騒々しい環境となる少し厳しい環境にはなる。
実際に使用してみて気になった点、技術チームからのフィードバック等をシェアしたいと思う。
使っていて悪かったところ、気になったところを挙げていく。
音声ガイダンスがうるさい
SYNCO XTALK X5は何か設定が変わると毎回音声ガイダンスが入る。
音量が上がれば「音量を上げた」、マイクをONにすれば「マイクをONにした」このような音声ガイダンスが毎回入る。
誰かが喋ったときに聞こえづらく音量を上げた際に音声ガイダンスが被ってきて余計に聞こえなくなってしまう。
或いは、喋る必要が無いからマイクをOFFにしたときにも「マイクをOFFにした」とガイダンスが入ってくるので鬱陶しく感じる。
これは人によって好き嫌いが分かれる部分ではある。
筆者は非常に鬱陶しく感じる。技術チームでは「この音声ガイダンス良いね」と言っている人もいた。
完全に大きく意見が二分されそうな部分ではある。
しかしだからこそ音声ガイダンスのON/OFFを選択できるようにしてほしかった。
という話をSYNCO マーケティングチームへフィードバックしたところ「ソフトウェアアップデートで対応予定です」という回答をもらえた。
音声ガイダンスのON/OFFを選択できる形でのアップデートは予定していないが、別の方法で音声ガイダンスの簡略化をテスト中とのことだ。
さすがSYNCOさん。対応が柔軟だ。
2024年6月ファームウェアアップデート予定という話ではあったが実際のリリースはいつになるかわからない。気長に待とう。
マイクアームの位置が悪い
SYNCO XTALK X5のマイクアームは本体から半分位はプラスチック製で、残り半分が可動性がある作りになっている。
これはコスト削減の都合もあると思うがアーム全てがフレキシブルに動く可動性を持っていてほしかった。
インカムで喋る時はできる限り小声で喋りたい。そのためマイクは極力口元に近づけたくなる。
しかしそのようにマイクを口元に近づけた位置でマイクをOFFにするため上に跳ね上げると確実に頭に当たる。
Hollyland Solidcom M1だとこのような現象は発生しなかったので、何が原因で発生しているのか厳密には分からない。
アーム全体がフレキシブルに動いてくれるとこの問題も解決できるのではないかと思う。
ただ前述したとおりコストの問題もあるのでそこまで求めて良いのか…。という気持ちもある。
リアルタイムモニタリング機能は微妙
今回使用したイベント配信では、完パケの音声モニタリングをSYNCO XTALK X5に搭載されているリアルタイムモニタリング機能を使っておこなった。
結論から言うと【リアルタイムモニタリング機能は使える場面が限定される】という感想だ。
今回筆者の環境では大音量下による、エアーの音声と実況解説の音声のバランスを常時モニタリングしながら調整する必要がある。
バランスを整える作業が必要とする音は向かない。
聞こえてくる音質が【インカム音質】であるため、厳密に音を聞きながらバランス調整をおこなうのは非常に困難と言える。
結局ミキサーのオーディオメーターを見ながら調整する羽目になった。
しかし単純にカメラマイクに音が来ているか否かの確認程度であれば問題無いだろう。
つまり音質が重視される現場では使い物にならないが、重視されない現場では充分実用範囲内と言える。
2.4GHzによる遅延はある
通常のワイヤレスインカムの場合は1.9GHz帯を使われることが多いが、SYNCO XTALK X5は2.4GHz帯を使用している。
2.4GHz帯を使用している関係上やはりトークに遅延は発生している。
実際の遅延は10~15フレーム程度ではあるが、話していると明らかに遅延を感じることができる。
しかし、総合格闘技のように刻一刻と状況が変わる中で配信ベースからカメラマンに指示を出していたが、問題無く指示を受けてくれたしスイッチングをしていて違和感を覚えることはなかった。
遅延は確かに気になるが実使用においては許容範囲内だと思う。
ただしドローンを使う現場では注意が必要だ。
ドローンの操作電波が2.4GHz帯を使用するため干渉するというレビューが散見されるのでドローンを導入する現場では注意してほしい。
トークバックは無い
Hollylandの各製品や恐らくその他ワイヤレスインカムを販売しているどのメーカーもこの機能は実装していない。
SYNCO XTALK X5に限った話では無いが、唯一この機能を搭載していたら歓喜しただろう。
だが、残念ながらSYNCO XTALK X5にもトークバック機能は搭載されていない。
各社のワイヤレスインカムの地味に嫌なところがこのトークバックが無いところだ。早く実装してほしい。
SYNCO XTALK X5総評
撮影協力:株式会社フルフォース・プロダクション
SYNCO XTALK X5を使ってみて気になったところは以上だ。
この後通常だと良いところを挙げるのがいつもの流れだが、特筆して挙げられる良いところはほぼ無い。
これは悪い意味では無く【価格を加味すると必要十分過ぎて問題無く通常使用できる】という意味だ。
色々気になった点は挙げたのだが、販売価格を加味すると『そこまで求めるべきでは無い』という結論に落ち着いてしまう。
とにかく『76,000円で5波のインカムが手に入れられる』この体験が素晴らしすぎる。
そして通常使用であれば何の問題も無く使うことができる。それが素晴らしい。
大音量の現場やドローンを使う現場では注意が必要だが、その他の通常使用であれば必要十分過ぎる性能を持っている。
Hollyland C1 Pro 6波を購入検討していた身からすると、SYNCO XTALK X5はインカム界のゲームチェンジャーだとすら思える。
予算が限られている現場ではぜひ導入して欲しいインカムだ。恐らく買って後悔はしないだろう。
ワイヤレスインカムヘッドセットシステム, SYNCO XTALK X5 5人対応 全二重ワイヤレスインカム 複数セット組...
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