ミラーレス一眼の撮影可能動画フォーマットの高解像度化に伴い、書込速度が早い記録メディアが求められるようになった。
各カメラメーカーがSDカードに代わり順次導入している書込速度の早い記録メディア CFexpressカード。
SDカードの書込速度が早くて300MB/s程度なのに対しCFexpressカードは1,000MB/s~1,700MB/s数倍の書込速度を誇る。
書込速度だけでなく読込速度もSDカードを大きく突き放し最大読込速度は1,900MB/sに及ぶCFexpressカードも存在する。
しかしSDカードと違いCFexpressカードは専用のリーダーが必要になるケースがほとんど。
SDカードスロットを搭載するPCは数多く存在しますが、CFexpressカードリーダーを搭載するPCは自作PCなどを除けばほぼ皆無。
動画の高解像度化に伴い1ファイル辺りのデータ量の増加も著しく、編集のためにPCへデータを移行させるだけでも多くの時間を必要とする。
そんな『ただデータを移行するだけ』の無駄な時間を極力削減するためにもCFexpressカードリーダーは転送速度の早いものを選択するべき。
LexarのCFexpressカード ダイヤモンドシリーズ128GBモデルを提供していただいた時に同時に送っていただいたCFexpressカードリーダー【Lexar PROFESSIONAL CFexpress USB 3.2 Gen 2×2 Reader】のレビューをしていきたいと思う。
この記事の目次(クリックでジャンプ)
目次
Lexar PROFESSIONAL CFexpress USB 3.2 Gen 2×2 Readerの詳細
今回提供していただいたCFexpressカードリーダーはLexar PROFESSIONAL CFexpress USB 3.2 Gen 2×2 Readerです。
この製品は新発売というわけではなく、2021年6月11日に発表された製品で執筆時点では約1年前の端末。
Lexar PROFESSIONAL CFexpress USB 3.2 Gen 2×2 Readerのスペック
大きさ | 98.4 x 64.85 x 8.20mm |
---|---|
重量 | 122.9g(実測 ケーブル抜き) |
インターフェイス | USB 3.2 Gen2x2 |
最大読取速度 | 1,700MB/s |
付属品 | USB-Cケーブル(Type Aアダプタ付き) |
Lexar PROFESSIONAL CFexpress USB 3.2 Gen 2×2 Readerの外観
パッケージ
同梱物
本体とUSB-C to C(Type A変換アダプタ付き)ケーブルが付属。
付属のUSBケーブル。変換アダプターが外れることの無いように一体化されているのは非常に便利。
なおUSB 3.2 Gen2x2はUSB Type-Cと形状が決められている。
よってUSB Type AでPCと接続した場合はUSB 3.2 Gen2、Type-Cで接続した場合のみUSB 3.2 Gen2x2となるので注意が必要。(PC側のUSB規格も対応している必要がある)
CFexpressカードリーダー本体
本体下面にCFexpressカードの挿入口
本体上面にUSB-C端子
本体のみの重量は実測122.9g。筐体が卵形?っぽいのでサイズ感は難しいが、本体上部の小さい部分は約47mm、本体下部の大きい部分は約65mm。
ケーブル込みの重量は144.7g
USB規格について(補足)
Lexar PROFESSIONAL CFexpressカードリーダー USB 3.2 Gen2x2がUSB 3.2 Gen2x2接続。
CFexpressカードリーダーに限らずUSBアクセサリーには様々な規格が存在する。転送速度の違いを理解しておくと今回のカードリーダーがどれくらいのポテンシャルを秘めているのかが分かる。
そのためUSB 3.1とかUSB 3.2とかを理解してもらうため少し難しいUSB規格の話をする。
※若干難しい内容になっているため、転送速度結果だけを見たい方は飛ばしてここをクリックして次のタイトルまで飛んでもらうと良い。
よく見るUSB規格について
2022年現在、各所に表記されているUSB規格は下記の通り。
- USB 2.0
- USB 3.0
- USB 3.1系
- USB 3.2系
- USB 4.0
ここに天下のIntel様が提供しているThunderbolt 3とThunderbolt 4が追加され、主立ったUSBの形をした接続規格は構成されている。
USB 3.1とUSB 3.2に『系』をつけたのは、それぞれGen1/Gen2等とジェネレーション分けされているため。
USBは各所で名称表記が異なる
USB規格は1.0から3.0辺りまでは順当に世代による数字の増加だけで分かりやすかったが、USB 3番台から雲行きが怪しくなってきた。
まず、転送速度480MbpsのUSB 2.0の後継機として2008年に転送速度5GbpsのUSB 3.0が登場。そして2013年にUSB 3.0の2倍の転送速度10GbpsのUSB 3.1が登場。
これだけなら単純で分かりやすかったがUSBの規格や仕様の管理などを行っているUSB Implementers Forum, Inc. (USB-IF) が、USB 3.1の登場と同時に表記を変更してきた。
- USB 3.0 ⇒ USB 3.1 Gen1
- USB 3.1 ⇒ USB 3.1 Gen2
上記のように表記を変更。USB 3.1表記へと統一した。
これにより
転送速度5GbpsのUSB 3.0 = USB 3.1 Gen1
転送速度10GbpsのUSB 3.1 = USB 3.1 Gen2
というものが成り立つようになった。
しかし過去に販売していたメーカーのプロダクトパッケージや動画などを変更することは不可能なので、この時点でUSB 3.0/USB 3.1/USB 3.1 Gen1/USB 3.1 Gen2が混在する状況になった。
ここまでであればギリギリセーフだが更に泥沼化したのがUSB 3.2登場のタイミング。
USB 3.1(USB 3.1 Gen2)の登場から4年後の2017年に転送速度20GbpsのUSB 3.2が登場した。
そしてこのタイミングでまた表記変更を実施。全ての規格をUSB 3.2表記へと変更した。
- USB 3.1 Gen1 ⇒ USB 3.2 Gen1
- USB 3.1 Gen2 ⇒ USB 3.2 Gen2
- USB 3.2 ⇒ USB 3.2 Gen2x2
つまり
転送速度5GbpsのUSB 3.0 = USB 3.1 Gen1 = USB 3.2 Gen1
転送速度10GbpsのUSB 3.1 = USB 3.1 Gen2 = USB 3.2 Gen2
というものが成り立つ。
例に漏れず既に販売されている製品の表記変更はできないためUSB 3.0/USB 3.1/USB 3.1 Gen1/USB 3.1 Gen2/USB 3.2 Gen1/USB 3.2 Gen2/USB 3.2 Gen2x2が混在するこの世の終わりのような状況を作り出す形となった。
たぶんこれで合ってると思う。これ分かる?
混乱しないUSB規格の見分け方
製品仕様ページを見るとそのメーカーがどのルールで表記しているのかをユーザー自身で理解する必要がある。
主なルールとしては2つあり
- USB 3.2表記で統一しGenで分ける
- 登場した時点でのUSB規格で分ける
転送速度ベースで考えると比較的分かりやすいと思う。転送速度が同じUSB規格は全て同じとして扱うことができる。
5Gbps | USB 3.0 USB 3.1 Gen1 USB 3.2 Gen1 |
---|---|
10Gbps | USB 3.1 USB 3.1 Gen2 USB 3.2 Gen2 |
20Gbps | USB 3.2 Gen2x2 |
転送速度さえ覚えておけば同じ転送速度のUSB規格自体は全て同じのため、どの表記をされていても一応理解することはできる。
Thunderbolt 2/ 3 /4の場合
厳密にはThunderbolt は1~4まであり、Thunderbolt 1の表記は【Thunderbolt】とだけ書いてあるが2013年にThunderbolt 2が登場して以来現在使用している新製品は無いため詳細は省く。
そして現在主流なのがThunderbolt 4。1年~2年前まではThunderbolt 3が主流だったため未だにThunderbolt 3を使っているユーザーも多いと思う。かく言う僕も未だにThunderbolt 3が最新規格のPCだ。
天下のIntel様は非常に分かりやすく名称をつけてくれて
- Thunderbolt ⇒ 最大転送速度10Gbps
- Thunderbolt 2 ⇒ 最大転送速度20Gbps
- Thunderbolt 3 ⇒ 最大転送速度22Gbps(最大帯域幅40Gbps)
- Thunderbolt 4 ⇒ 最大転送速度22Gbps(最大帯域幅40Gbps)
Intel様が提供している技術、Thunderbolt 3及びThunderbolt 4。特にMac系で採用が進んでいる規格。これは非常に分かりやすく順当に進化しており、とりあえずThunderbolt 4ケーブルさえ買っておけば下位互換は保たれている。
Thunderbolt 3 及びThunderbolt 4で最大転送速度と最大帯域幅という2つの呼び方がいきなり出現したが、Thunderbolt 3以降はデータ転送だけでなく映像も出力できるようになったためだ。
Thunderbolt 3以降はThunderboltケーブルだけで映像転送もできるようになり、映像転送として使われる帯域が18Gbps(4K1枚)、データ転送で使われるのが22Gbps(=最大転送速度)となり合計40Gbpsの通信(最大帯域幅)が可能である。という意味。
Thunderbolt 4は転送速度(帯域幅)こそ変更は無いものの、ケーブルの長さによる制約が進化。
細かく言うと映像の帯域幅も増えて32Gbps(4K2枚or8K1枚)まで映像出力が可能になったがThunderbolt 3は40Gbpsの通信が可能なケーブルの長さは最長0.8m、それ以降は20Gpbsに制限される。しかしThunderbolt 4は最大2mまで40Gbpsの転送が可能になっている。
今回の比較におけるUSB規格
Lexar PROFESSIONAL CFexpressカードリーダー USB 3.2 Gen2x2は最大転送速度20GbpsだからUSB 3.2 Gen2x2接続。
そして、今回速度計測をするALIENWARE AREA-51M R2が搭載するUSB規格はUSB 3.2 Gen1(最大5Gbps)とUSB 3.2 Gen2(最大10Gbps)の2つ。つまり今回の計測は理論上10Gbps(1,250MB/s)の転送速度が上限となる。
以上ややこしいUSB/Thunderbolt問題の解説。もし間違っていたら指摘してもらえるとありがたい。
Lexar PROFESSIONAL CFexpress USB 3.2 Gen 2×2 Readerの転送速度
ではLexarのCFexpressカードリーダーの転送速度を計測していこうと思う。
使用するCFexpressカードLexarのCFexpressカード ダイヤモンドシリーズ128GBモデル。
Lexar CFexpress ダイヤモンドシリーズの最大読込速度/最大書込速度は下記の通り
最大読込速度 | 1,900MB/s |
---|---|
最大書込速度 | 1,700MB/s |
計測テストは各3回行うが発熱による速度低下が発生する可能性も否めないためあくまで参考程度として見ていただければと思う。
また計測環境や個体差・USBケーブルの質などによって計測結果は異なる可能性があるので予め了承いただきたい。
LexarダイヤモンドシリーズUSB 3.2 Gen1接続(最大5Gbps)
LexarのCFexpressカード + Lexar PROFESSIONAL CFexpressカードリーダー USB 3.2 Gen1接続による計測
1回目
2回目
3回目
書込・読込共に約450MB/s付近を記録している。Lexarのダイヤモンドシリーズは最大読込速度は1,900MB/s 最大書込速度:1,700MB/sでスペックには大きく足りないが、約3,600Mbps(=3.6Gbps)転送速度は出せている点を考えるとUSB3.2 Gen1接続(最大5Gbps)の場合はこの程度なのかもしれない。
USB 3.2 Gen1接続では最大転送速度5Gbpsという壁が大きいことがわかる。
LexarダイヤモンドシリーズUSB 3.2 Gen2接続(最大10Gbps)
LexarのCFexpressカード + Lexar PROFESSIONAL CFexpressカードリーダー USB 3.2 Gen1接続による計測
1回目
2回目
3回目
Lexar ダイヤモンドシリーズのCFexpressカードは全体的にパフォーマンスが安定していて安心できる。
約2倍の速度となった読込速度は約1,040MB/sを記録しこれは8,320Mbps(=8.2Gbps)となり、USB 3.2 Gen2の理論値10Gbpsの約8割に相当する。
書込速度も大きく上昇し約990MB/s前後でこれは7,920Mbps(=7.9Gbps)となり、こちらもUSB 3.2 Gen2の理論値10Gbpsの約8割に相当する。
Lexar ダイヤモンドシリーズは最大読込速度:1,900MB/s 最大書込速度:1,700MB/sで、カードのスペックには届いていないが、単純にUSB規格による上限に当たっているだけでUSB 3.2 Gen2の性能をフルに引き出せていると言えるだろう。
総評
今回の検証では結果的にUSB規格の最大転送速度の上限によって明確な差を感じることができなかった。
しかし逆にUSB 3.2 Gen1とUSB 3.2 Gen2とでは明確な転送速度の差が出たため、以前までは『USB規格による転送速度の違いなんてあまり変わらないでしょ』と思っていたが間違っていた。
明らかな差がUSB規格によって感じられた。そしてこれは編集作業(データ移行や書込)に大きな差を与える。ましてや8K素材などとなると、再生するために読込速度が必要、書き込むために書込速度が必要となる。
今回提供していただいたLexar PROFESSIONAL CFexpress USB 3.2 Gen 2×2 Readerは現在最新のUSB 4(最大転送速度40Gbps)に次ぐ20Gbpsの通信を行える規格であるUSB 3.2 Gen2x2に対応している。
20Gbpsは理論上2.5GB/s(2,500MB/s)を行える。
今回のテスト結果から8割掛けだったとしても2GB/s(2,000MB/s)の通信ができる計算だ。実際にUSB 3.2 Gen2x2を搭載したPCを持っていたら積極的に試したいと思う。
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