Canon EOS R5 Cのレビュー:新たな撮影機材にアップグレード

過去3回に渡って【EOS R5からEOS R5 Cへの乗り換え】に関して考察した。

EOS R5とEOS R5 CのAF性能を比較 EOS R5Cへの乗り換えを検討 その3

2023年2月7日

EOS R5とEOS R5 Cの手ブレ補正を比較 EOS R5Cへの乗り換えを検討 その2

2022年11月10日

EOS R5の熱暴走はやはり耐えられなかった。EOS R5 Cへの乗り換えを検討 その1

2022年11月3日

結論から言うとメインのフルフレームミラーレスをEOS R5 Cに乗り換えた。
Canonが2022年11月にカメラ・レンズを約10%〜20%程値上げした。

僕が使っているEOS R5に至っては506,000円から572,000円に値上げをした。(キヤノンオンラインショップ価格)
当然EOS R5 Cも値上げの対象となっており、当時僕が購入した価格は584,300円。執筆時点での価格.comにおける最安値は623,700円。

値上げ前にこのEOS R5 Cを購入し、購入後約4ヶ月が経過した現時点で購入レビューを書いていきたいと思う。

この記事の目次(クリックでジャンプ)

動画メインのEOS R5は大変

写真も撮りたいし、メインの業務における動画でも使用したい。当時思えば贅沢な欲求を求めてEOS R5を購入した。

EOS RからCanonのフルサイズミラーレスデビューをして、世界初8K RAW動画を撮れるというキャッチコピーに踊らされ(騙され)EOS R5を購入に至った。

言葉を選ばずに言うとこれは失敗だった。失敗とまで言うと語弊があるが、EOS R5の購入で多くを学んだ。具体的には

  1. 動画撮影中音声レベルメーターはあった方が良い
  2. 動画撮影中水準器はあった方が良い
  3. 録画時間はできる限り長い方が良い(保険的に)
  4. オーディオ入力も強い方が柔軟性が出る
  5. 8Kは使わない
  6. 熱の問題は結構シビア

これらの学び、問題点だと認識してからEOS R5 Cへの乗り換えで問題点の解決に挑んだ。

EOS R5 Cに乗り換えて困ったところ

EOS R5 Cレビューimg01

EOS R5の購入によって発生した問題点を解決するためにEOS R5 Cへ乗り換えたわけだが、問題点の解決ができたところと新たな問題点が発生したところがある。

まずはEOS R5からEOS R5 Cへ乗り換えたことによって発生した問題点・気になった点を挙げていきたいと思う。

写真の手ブレ

EOS R5 Cのボディ内手ブレ補正の廃止に関しては購入前に分かっていたことだ。

しかし、手ブレ補正の廃止という点においては当初の予定より少し違った点で少し気になる点を覚えた。

当初の予定だと「動画撮影中」に問題点を覚えると想定していたが、EOS R5 Cの電子手ブレ補正が思ったより優秀なのと、レンズ内手ブレ補正で十分補整できるという良い意味で想定外のことが起きた。

今回ボディ内手ブレ補正の廃止において不便を感じたのは「写真撮影時の手ブレ」だ。

僕が所有しているRFレンズは下記の通り。

  1. RF15-35mm F2.8 L IS USM
  2. RF28-70mm F2 L USM
  3. RF70-200mm F2.8 L IS USM

この中でレンズ内手ブレ補正を搭載しているのは①と③だ。個人的に一番使い勝手の良いRF28-70mm F2.8 L USMはレンズ内手ブレ補正が搭載されていない。

EOS R5 Cレビューimg02

このRF28-70mm F2 L IS USMをEOS R5につけていたときの癖で、シャッタースピードを1/100秒や1/125秒に設定してしまうことがある。
レンズ内手ぶれ補正が無いこのレンズではそのシャッタースピードで撮影することができない。写真の手ブレが発生してしまうのだ。

動画撮影では電子手ブレ補正が優秀でどのレンズでも違和感なく撮影することができる。ボディ内手ブレ補正の廃止によって最も気を付けるべきは静止画撮影だということを理解した。

バッテリーの保ちは雑魚オブ雑魚

EOS R5 Cレビューimg03

動画撮影モードにおけるEOS R5 Cのバッテリー保ちは最悪だ。
満充電のバッテリー(LP-E6NH)だったとしても起動直後に表示される撮影可能時間は約40分だ。4K 30fpsの撮影設定だったとしても。

しかも新たに搭載された8K 60fps RAW撮影においては内臓バッテリー(LP-E6NH)だけではオートフォーカスが上手く機能しない。
もはや内臓バッテリー(LP-E6NH)だけで撮影することを前提としていないとすら感じられる。モバイルバッテリーによる外部給電が必須だ。

EOS R5もそうだったが、EOS R5 Cでも給電できるモバイルバッテリーとできないモバイルバッテリーが存在する。僕が使っているのはCIOのSMARTCOBY Pro 30Wだ。

モバイルバッテリーで外部給電するとは言っても、消費電力が多いことには変わりない。現在使っているCIO SMARTCOBY Pro 30Wは10000mAhの容量ではあるがそこそこバッテリーの減りは早い。

8K 30fps RAWで撮影した時ではあるが
30分撮影後:84%残
60分撮影後:66%残
90分撮影後:47%残
120分撮影後:27%残
あくまで目安だが、このような経過になった。ザックリ30分で20%(2000mAh)消費するイメージだ。つまり2130mAhの純正バッテリー(LP-E6NH)では30分ちょいしか保たない。そういう意味ではディスプレイの表示通りだ。

丸一日撮影の時はCIO SMARTCOBY Pro 30Wを3つほど用意している。

モード切替は遅い

EOS R5 Cレビューimg04

EOS R5 Cは通常のEOSのインターフェースのPhotoモード、Cinema EOSのインターフェースのVideoモード。2つのOSを搭載している。それぞれ完全に独立していて、Photoモードで動画撮影はできないしVideoモードで写真撮影もできない。

良くも悪くも完全に分業されているのだが、スピードが求められる場面ではこれが大きなデメリットになる。それぞれのモードの切り替えを電源スイッチでトグルする形になるが、必ず【電源OFF】を経由する形になる。

物理的にOSを再起動するような形になるため、各モードの切り替えには7〜8秒かかる。長いときは10秒程度かかる場合もある。
VideoモードからPhotoモードに切り替えるときが特に遅い。

Videoモードではオーバーヒート(いわゆる熱暴走)防止のため、ほぼ常時ファンが回転している。VideoモードからPhotoモードに切り替える際には、このファンを完全停止するまで待たなければいけないため特に時間がかかる。

写真から急に動画を撮りたくなるようなイベント撮影では少し運用方法を気を付けなければいけない。

水準器は見づらい

EOS R5 Cレビューimg07

動画撮影中にも水準器を表示できる様になったのはEOS R5から乗り換えて良かったポイントだ。しかし、Cinema EOSのUIなのか、EOS R5 Cに表示される水準器のデザインはどうも慣れない。

PanasonicのGHシリーズの様に液晶中央に水平線を表示された方が個人的には分かりやすいのだが、EOS R5 Cの水準器は液晶下に気泡を使った水準器の様なUIになっている。

慣れれば問題なくなるとは思うのだが、現時点ではどっちに傾いているのか混乱してしまう時がある。

AFに慣れが必要

EOS R5 CはPhotoモードの場合【デュアルピクセルCMOS AF II】Videoモードの場合は【デュアルピクセルCMOS AF】を採用している。

これはCinema EOSのUIなのかもしれないが、基本的に顔・瞳優先のAFモードを選択していたとしても、常時ゾーン選択の枠が表示されている。

その状態で、カメラが顔・瞳を認識した段階で顔・瞳AFモードに移行する。顔か瞳を補足する。

明らかな人を撮影している場合は良いのだが、木の葉っぱや風景を撮影していると顔や瞳の誤認識が発生する。「どう見ても顔じゃない部分」に顔認識としてAFを補足しようとする場面がある。

また、AFテストの動画でも検証したが、デュアルピクセルCMOS AF IIに比べるとやはり精度や速度は劣っているような印象を持つ。

車載時の手ブレ補正の挙動がおかしい

車載動画は大抵フロントガラスに近いところ(ダッシュボード)の位置にカメラを配置することになる。

GoProで試したことがあるがやはり熱問題が解決できずすぐに録画が止まってしまう。また僕が持っているGH5Sは手ブレ補正が無いため車の振動をもろに拾ってしまう。

そんななか今回EOS R5 Cは熱対策も万全で暑い環境でも恐らく録画が途切れることが無い。RF15-35mm F2.8 L IS USMを使えばレンズ内手ブレ補正で車の振動も吸収できる。

と考えEOS R5 Cを車載動画機として使ってみたが、どうも手ブレ補正の挙動がおかしい。

下記動画を見て欲しい。無音動画なので数十秒でも再生してもらえると分かると思う。

このように常にカクッカクッという左右の揺れがある。
この挙動を見る限り、恐らくレンズ内手ブレ補正が悪さをしているような気はする。この時はレンズ内手ブレ補正とボディ内電子手ブレ補正両方をONにしていた。

車載動画のような細かい振動が常に伝わり、左右にGがかかるようなシーンでは手ブレ補正の制御がまだ完璧に把握は出来ていない状況だ。

EOS R5 Cに乗り換えて良かったところ

EOS R5における不満点を解消するためにEOS R5 Cに乗り換えたのだが、その他にもいくつか良かった点があるので紹介する。

CFExpressカードが安定した

僕がメインで使用しているのはSUNEAST CFexpress Type Bカード 2TBだ。

【購入レビュー】SUNEAST CFexpress Type Bカードレビュー

2022年2月15日

以前のレビュー記事でも少しだけ触れたが「書込速度が足りません」とたまに出る場合がある。これは熱による影響だと思われるが、EOS R5 Cになってからは一度も出ていない。

熱対策を万全に行っているから当然と言えば当然だが、以前不具合が出てたカードだけにそういった心配が無くなるのは嬉しい。

8K 60fps RAWの収録も可能になっているため大容量のCFExpressカードが必要になる。その点SUNEASTのCFexpress Type Bカードは比較的安価なため手に入れやすくありがたい。

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EOS R5用のリグがそのまま使える

EOS R5 Cレビューimg06

EOS R5の時点で使用していたSmallrigのケージをそのまま流用することもできた。追加でアクセサリーを購入する必要が無かったのでこれは助かった。

マルチアクセサリーシューになっているため、アクセサリーシュー以外にも色々と機材を取り付けたいのだが、1/4インチねじ穴が至るところに切ってあるケージをそのまま流用できるのはありがたい。

EOS R5 C専用設計のものもある。どっちを購入しても良いだろう。

各設定が完全に独立

EOS R5 Cレビューimg10

先述したがEOS R5 CはPhotoモードとVideoモードに分かれている。これはOS毎に完全に独立しているため、それぞれの設定が完全に保存される。

EOS R5を使用していた時も各々設定は保存されていたが、たまに写真撮影の時でもシャッタースピードが1/50になってしまっていたり、動画撮影でシャッタースピードが1/250になっていたりした場面がある。

動画撮影のシャッタースピードは1/50、1/60、1/100のほぼ3種類しか使用しない。対して写真撮影のシャッタースピードはいろんな場面によって変わる。

動画のシャッタースピードを一度決めた後ほぼ変更することが無いので、OSが2つ搭載されているということはこういうメリットもあるのだと感じた。

WFMの表示もできる

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Cinema EOSのUIを採用しているEOS R5 Cは映像撮影に必要な情報はほぼ全て表示してくれる。

水準器・オーディオメーターの表示期待していたが、さらにWFMも表示できることに驚いた。(Waveform Monitorの略称で、動画の輝度信号の波形を視覚的に表示するツールのこと)

Log撮影をしていると、ビューアシストを適用していたとしても、飛びすぎていないか?潰れていないか?をパラメータで確認できるので撮影において失敗しづらくなっている。

Super 16mmモードが使える

EOS R5 Cレビューimg09

EOS R5にもAPS-C(1.6倍)クロップは搭載している。EOS R5 Cの場合はSuper 35mmのモードとなるが、更にSuper 16mmモードも搭載している。

フルフレーム35mm判換算でRF15-35mm F2.8 L IS USMを装着した場合35mmから133mmまでクロップすることができる。(Super 16mmの場合最大解像度は1080pとなる)

最終納品が1080pの場合、最悪このモードを使うことがある。僕が所有しているRFレンズはどれも大きく重い。出張で地方に行くとき、他にも荷物があるとどうしてもレンズを少なくせざるを得ない場合がある。

その場合は1つRF15-35mm F2.8 L IS USMだけを持っていって、擬似的に15mmー133mmの様なレンズとして運用することがある。

これに気付いてからどこかに移動する時も「とりあえずRF15-35mm F2.8 L IS USMだけつけて行こう」と思える様になった。

EOS R5 C Mark IIに期待すること

EOS R5で不満を持っていた機能のほとんどは改善されたがまだまだ完璧とは言いづらい箇所はいくつかある。

2022年3月に発売されたばかりのEOS R5 Cで、まだまだ気が早いがMark IIに期待する機能をいくつか挙げたいと思う。

フルサイズHDMI搭載

EOS R5 Cレビューimg05

EOS R5 Cはボディの製造ラインをEOS R5と共通化しているのかHDMIがMicro(Type-D)だ。

これはゴミ仕様だ。使いづらい。折れる。配信などの長距離伝送で使いづらい。今すぐにフルサイズ(Type-A)のHDMIに変えてほしい。

つい先日発売開始されたLumix S5 Mark IIも以前はMicro HDMIだったがMark IIではフルサイズHDMIに変更を加えてきた。

これだけインターネット配信というものがポピュラーになりつつある中、ましてやCinemaラインの機種でMicro HDMIをつけるなんて、開発陣は頭が悪すぎる。

チルトフリーアングル液晶搭載

Panasonic S1Hや最新のGH6,SONYのα7R Vにも搭載されている液晶背面モニターの機構。バリアングルもいけるしチルトアングルもいける【チルトフリーアングル】な液晶モニター。

EOS R5 Cは液晶背面モニターの前に排熱ファンが搭載されている。構造としてはLumix GH6に似た構造だ。

Lumix GH6はバリアングルもいけるしチルトアングルもいける。一度ビックカメラで触ったがこのチルト構造が動画撮影で非常に役立つ。

光軸とレンズが真っ直ぐの状態で胸の前にカメラを構えた状態で圧英することができる。スペース的にはEOS R5 Cにもそのような構造を入れられると思えるのだが、構造的な制約があるのだろうか。

Mark IIではぜひ採用して欲しい。

Time Codeのカメラ設定時間の追加

EOS R5 Cレビューimg12

EOS R5 CのTime Code設定はRec RunかFree Runは選択できるが、【カメラの時間設定】に設定することができない。

何時の日の何時に撮影したか?が個人的には分かった方が後編集しやすいので、選択できるようにしてもらえるとありがたい。

映画撮影においてはTCを同期するからマルチカメラでも問題ないのだろうか。

総評:乗り換えて良かった

Cinema EOSのUIになったり、PhotoモードとVideoモードの入れ替えに時間がかかったり、いくつか気になる点はあったが乗り換えて良かったとは思っている。

動画撮影では30分制限が無くなり、熱による心配も無くなった。どんな場面でもバッテリーさえ続けばエンドレスで撮影できる様になった。

写真撮影も今までと変わらない画を出してくれる。尚且つ動画撮影における心配が全て解消された。いくつか不満点はあるが心配は無くなった。これだけでも業務使用としてはありがたい。

何か心配事を抱えた機種を業務で使うのは精神衛生上悪い。それが無くなっただけでも十分価値を感じている。

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